



FXテクニカルやチャート分析について学んでいると、「ダウ理論」という言葉が出てきますよね。
名前の響きから、難しそうなイメージを持っているかもしれませんが、実際に学んでみると初心者でも分かるように「なるほど」と納得できるシンプルな理論なのです。
今回は、「ダウ理論」を誰でも理解できるようにわかりやすく解説していきます。
ダウ理論はテクニカル分析に必要?
ダウ理論を知ることは、チャート分析の基本を知ることに等しく、FX初心者の方は、ぜひこの機会に、しっかりマスターしておきましょう。
ダウ理論はどんな理論?


相場はつねに上がったり下がったりしています。次にどうように動くのかは誰にも予測することはできません。
一見、不規則でバラバラに動いているように見えるチャートの動きも、実は一定の法則に従って動いている、というのがダウ理論です。
ダウ理論の法則は大きく6つあります。
ダウ理論6つの法則
- 市場価格にはすべての情報が織り込まれている
- トレンドは3つに分類できる
- トレンドには3つの段階がある
- 相場動向が他の商品でも確認できる
- トレンドは出来高に反映される
- トレンドはサインが出るまで継続する
予測不可能かと思える相場動向も、ダウ理論を覚えることで先が読みやすくなるのです。



チャールズ・ダウとはどんな人?
“To know Values is to know the meaning of the market.” ~Charles Dow
価値を知るということは、市場動向を知るということ
チャールズ・ダウ(Charles Dow)は、株価指数のNYダウ・ダウ平均の名前にも使われている超有名な人物です。
時は1880年代、世界に鉄道が普及し始めた時期のこと。チャールズ・ダウと友人エドワード・ジョーンズは、小さなアパートの一室を借りて鉄道投資向けの新聞を発行し始めました。この新聞がのちのウォール・ストリート・ジャーナルとなります。
もともとダウ理論は、鉄道投資・ダウ平均の取引手法として当時のウォール・ストリート・ジャーナルで紹介された記事の1つでした。
チャート分析やトレンドといった用語すら、まだ一般的に浸透していなかった時代です。ダウの理論は前代未聞の投資情報として脚光を浴び、小さな新聞社は見る見るうちに巨大企業へと成長していったのです。



チャールズ・ダウは現代のモダンな市場取引やテクニカル分析の土台を築いたともいえるんだ。
ダウ理論6つの法則を一番わかりやすく解説








ダウ理論1.市場価格はすべての情報が織り込まれている
Dow Theory 1.The Market Discounts Everything
インサイダーの動きが先行して現れる
とくに、この理論においてダウはインサイダーの存在を指摘しています。
公衆に向けてニュースが報道される前に、内部に密通した一部の投資家が早めに動き出すとのこと。特に理由もなく価格が急激に動く時は、何らかのニュースが報道される可能性があります。
AUDJPY 1分足チャート


例えば、6月7日13:30にRBA(豪中銀)が利上げを発表しました。約1分間で70pipsも上昇したのですが、注意深くチャートを観察していれば、すでに上昇の前触れが現れていますね。
インサイダー取引は国内・海外を問わず違法ですが、完全に取り締まることはできません。違法行為ではあるものの、インサイダーの動きがヒントになることがあるのです。
ダウ理論2.トレンドは3つに分類できる
Dow Theory 2.There are Three Primary Kinds of Market Trend
2つめのダウ理論は、基本となるトレンドは3つのトレンドで構成されています。
- メイントレンド → 基本となるトレンド(長期トレンド)
- セカンドトレンド → 逆行する小休止のトレンド(中期トレンド)
- マイナートレンド → 細かい値動きのトレンド(短期トレンド)
3つのトレンドで構成された1つのトレンド


基本となるトレンドは上昇でも、セカンドトレンドが上がったり下がったりして動いています。例えば、月足のトレンドの中で1時間足が動いているようなイメージですね。
さらに細かくみると、1分足や5分足などのマイナートレンドが含まれています。つまり、短期の値動きは基本的に中期・長期のトレンドからそれることがないと見れるのです。
ということは……
1分足は1時間足で、1時間足は日足・週足などを見れば値幅や相場動向が伺えるのです。
ダウ理論3.トレンドには3つの段階がある
Dow Theory 3.Primary Trends Have Three Phases
次に、エントリー・利益確定を計るときに大きく役立つのが、ダウ理論の3つめの法則です。
3つめの法則では、トレンドの流れには3つの段階があるのです。
- 準備期間 → 新しいトレンドが始まろうとする期間
- 加速期間 → トレンドが勢いをつけて加速する期間
- 減少期間 → トレンドが弱まっていく期間
トレンドは3つの段階を繰り返している


上図のように、1つのトレンドは「準備期間 → 加速期間 → 減少期間」と3つの段階に動いていくのです。
減少期間を迎えたトレンドから新しい段階のトレンドが継続することもあれば、逆方向に反転することもあります。
「準備 → 加速 → 減少 → 準備 → 加速 → 減少 → 準備……」
下降トレンド、上昇トレンドとどちらの方向に向かったとしても、このサイクルを延々と繰り返しながら動くのです。
トレンドの減少期間がきて、準備期間が始まった段階でエントリー。加速期間から減少期間に移った段階で利益確定が狙えますよ。
ダウ理論4.相場動向は他の商品でも確認できる
Dow Theory 4.Different Market Confirm Each Other
そして、4つめのダウ理論は、相場動向はその他の金融商品の動きから想定できるということ。
ある商品を取引する時には、その商品に連動する商品の動きを見ることで、ヒントが得られることが多々あります。
あるいは、相反関係にある商品の動きからも、先の動きが読めることもあります。
連動する商品と相反する商品を調べておこう


例えば、米ドル円に連動しやすいのがドルインデックス。そして相反するのが米国10年債です。
ドルインデックスとドル円はほぼ上下のタイミングが同じです。反面、10年債とは反対の動きを見せていますね。
銘柄ごとに連動する商品・相反する商品が異なります。取引したい銘柄ごとに「連動する商品」「相反する商品」を事前に調べておきましょう。
ダウ理論5.トレンドの強弱は出来高に反映される
Dow Theory 5.Volume Must Confirm the Trend
次にダウ理論の5つめの法則が、出来高にはトレンドの強弱が反映されるということ。ダウによると、トレンドが上昇でも下降でも、勢いがある時は出来高も多くなるのが自然だと言っています。
トレンドと出来高が相反する時は注意


上図チャートAでは出来高もかなり多くなっているのがわかりますよね。
これは取引量が多くてトレンドに勢いがあると見れるのです。
しかしBを見ると、上昇に反転しそうでも出来高は減り続けています。
これは取引量が減ってきいている証拠で、この後下がってますね。
上昇! 下降! とトレンドの波にのる時には、出来高の勢いや強弱を確認することも大切です。
ダウ理論6.トレンドはサインが出るまでは継続する
Dow Theory 6.Trend Persist Until a Clear Reversal Occurs
そして、最後6つめのダウ理論はトレンドはサインが出るまでは継続するというものです。
ダウによると、トレンドの継続とトレンドの転換には一定の法則があるとのこと。
ダウ理論では安値・高値の位置を目安にトレンド継続とトレンド転換を見分けていきます。
トレンド継続の法則


- 上昇トレンド → 高値と安値の位置が次第に高くなっていく
- 下降トレンド → 高値と安値の位置が次第に低くなっていく
高値と安値が前回よりも上の位置に来るときは、上昇トレンドにあることを意味しています。
反対に、高値と安値が毎回下がっていく時には相場が下降していることを表しています。
高値・安値が前回よりも高い位置にある(低い位置にある)状態が続く限りは、ダウ理論ではトレンドが継続すると考えることができます。
トレンド転換の法則


- 上昇トレンドで直近の安値を下に抜ける → 下降トレンドに転換
- 下降トレンドで直近の高値を上に抜ける → 上昇トレンドに転換
上昇トレンド中に直近安値の位置よりも下がり始めたら、トレンド継続の法則が崩れたと判断できます。
ダウは、このタイミングが上昇トレンドから下降トレンドに切り替わるサインだと言っています。
同様に、下降トレンド中に直近高値の位置よりも上がり始めたら、トレンド継続の法則が崩れたと判断できます。これを下降トレンドから上昇トレンドに切り替わるサインと言っています。
ダウ理論のトレンド転換のサインとは、継続している高値・安値の法則が崩れることをいうのです。
ダウ理論まとめ


ダウ理論が紹介されたのは、今から100年以上も前のことです。
当時の原文のままでは時代に沿わない表現が多かったため、一般的に知られているダウ理論は現代風にアレンジしてあります。
紹介するアナリストや翻訳者によって、表現・言い回しが異なるため、難しく感じることもあるかもしれません。ただ実際は今回見てきたように思った以上にシンプルなのです。