FXの分析手法にはテクニカルとファンダメンタルズの2つがあります。
両方とも初心者には難しく感じるものですが、とくにファンダメンタルズでは、初めての経済用語がたくさん出てきます。
思わず、自分にはわかるわけがないと抵抗を感じてしまう方は多いのではないでしょうか?
しかし、ファンダメンタルズ分析も自分なりのやり方で少しずつアプローチしていけば、けっして難しいものではありません。
テクニカル分析と同じで、結局は長く使っていくうちに自然と身につくスキルなのです。
今回はFXのファンダメンタルズ分析を、誰でも簡単に理解できる方法でわかりやすく解説していきます。

テクニカルの勉強は分かってきたけど、ファンダメンタルズも覚えた方がいいの?



基本的に相場はテクニカルとファンダメンタルズの両方から動いていくんだよ。
ファンダメンタルズも勉強した方がトレードは断然有利になるからしっかりと勉強しておこう!
FXでファンダメンタルズ分析は必要?


FXで相場を分析する方法には大きく分けて「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」の2つがあります。
テクニカルを使うにしても、ファンダメンタルズを使うにしても、片方を完全に無視することはできません。
なぜなら、相場は両方の影響を受けるからです。
とくにファンダメンタルズは投資家心理を大きく左右する傾向にあり、市場動向を読むにあたって重要な材料となり得るのです。
なぜファンダメンタルズが重要なのか
コロナウイルスやロシア・ウクライナ戦争など、テクニカルでは太刀打ちできない予測不可能な出来事がある日突然やってきます。新聞のトップ紙面にデカデカとのるような重大な出来事ですね。
このような出来事は、そう頻繁に起きることではありませんが、何らかの突発的な出来事をきっかけに、相場は瞬く間に暴落へ向かうことがあります。
ドル円 2022年3月4日 (1時間足チャート)


例えば3月4日にロシアがウクライナの原子力発電所を侵略した時には、その報道から投資家心理は急激に悪化。
その後、ガスの価格は高騰し、インフレ懸念も相まってドル円は急落に向かいました。わずか3時間で1ドル近くも下がってしまったのです。
仮に急落や暴落はしないとしても、マーケットはささやかなファンダメンタルズの積み重ねで投資家心理を上に下にと変化させます。
このようにファンダメンタルズが相場に与える影響は思った以上に大きいのです。



ファンダメンタルズを知ることで、テクニカルで読めない相場の動きをキャッチできる可能性があるんだ。
初めてのファンダメンタルズ分析 基礎知識





でも、ファンダメンタルズをどうやって勉強すればいいかわからない……



確かに、難しい用語がいっぱい出てくるよね。でもね、コツを押さえて学んでいけば、意外と誰でも簡単に覚えることができるから今から勉強していこう!
経済やマーケットの情報を文字で読むのは、当然最初は誰でも難しく感じてしまうかもしれません。
なぜなら初めて見る用語ばかりだからです。
そこで、まずはファンダメンタルズ分析に対してプラスの発想に切り替えていきましょう。
まずプラスの発想に切り替えること
「難しい用語がたくさん出てくる」 → 「難しい。自分にはわからない」
これは間違いです。ここで先入観を捨てて、もっとプラスに考えてみましょう。
「難しい用語がたくさん出てくる」 → 「新しい言葉を覚えた先に勝つための道筋があるかもしれない」
これが正しい考え方です。
つまり、ポジティブに考えることが勝つための道へとつながっていき、そして、分からなかった用語も何回も見ることで自然と覚えていきます。
※子供が1つずつ言葉を覚えていくような感覚に似てますね
勉強は続けていくうちに必ず理解できるようになりますので、最初は意味がわからなくても大丈夫! 最初は用語に少しずつ慣れていくようにしましょう。
そしてもう1つ……
「ファンダメンタルズを勉強しよう」ではなく「今日は相場に影響することは何があったのか見てみよう」
に切り替えます。
このように思うことでファンダメンタルズが自然と頭に入ってきます。わからなくても難しく考えないこと。
市場ではどんなことがあったのかを興味を持って見てみることです。



発想を少し変えるだけで、経済・市場のことが理解できそうな気持になるでしょ?全て自分のためなるんだ、と思って勉強していこう!
チェックしたい経済ニュース・指標とは?


FXトレードでチェックしておきたい経済ニュースや指標は、
- ニュース速報・突発的なニュース(一番重要)
- 経済指標の発表
- 金融政策
- 要人発言
- 国際ニュース
- その他の主要金融商品
おもに6つのジャンルに分けられます。
ではそれぞれどんな内容をチェックするのか表で見てみましょう。
ジャンル | テーマ・トピック・チェックポイント |
---|---|
ニュース速報 | コロナウイルス、ウクライナ・ロシア問題、総合的に重要なニュースの発表 ※とくに災害や戦争などインパクトが強いニュースは押さえておきたい |
経済指標 | GDP成長率、米国雇用統計・失業率、消費者物価指数CPI、貿易収支、ISM製造業景況指数、小売売上高など |
金融政策 | 政策金利(米国・欧州・英国・日本・中国などの主要国、取引する通貨国)、国債の金利など |
要人発言 | 主要国中央銀行の重要人物(J・パウエルなど)、米国大統領、ウォーレン・バフェットやイーロン・マスクなど影響力のある人物 |
国際 ニュース | 国際的に注目されているイベント、政治、経済、戦争、事故、宗教など |
メジャーな 金融商品 | メジャーな株価指数インデックス、原油・金などの先物商品、米国の主要株式など |
時期によって注目される人物やトピックは変わってきます。
ニュースをチェックするようになると、市場が今何に注目しているのかがわかるようになります。
最近だと、インフレ・リセッションに市場は目を向けていますので、原油やガスの価格、消費者物価指数、政策金利の発表などに敏感に反応する傾向にあります。
そこで、とくに押さえておきたいテーマ・トピックをいくつか選んで解説しておきましょう。
経済指標.GDP成長率
GDP成長率とは、国内総生産高(GDP)がどれくらい伸びているのかを表す数値。
※経済成長の速度や安定性の目安となります
数値が高い、または安定していれば、その国の経済情勢が良好なサインです。
米国 GDP成長率
4半期ごとに前期と比較したもの、前年同期比で比較したものとあります。
上図グラフは米国の4半期ごとのGDP成長率です。
経済指標.消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数とは、物価の変動を表したもの。
単にCPIと呼ぶこともあります。消費者物価指数から算出されるインフレ率は、原則として2.0%前後が健全な状態です。


エネルギー高から派生した高インフレに、今米国や欧州は苦戦しています。
過度な物価上昇は相場にとってはマイナスの要素となり得るのです。
金融政策.金利
さて、物価が上昇しすぎた場合に一斉に注目が集まるのが政策金利です。
政策金利のイメージ


その時々の状況にもよるので一概にはいえないのですが、原則として、「金利が上がると → ドル買いの材料」「金利が下がると → ドル売りの材料」となる場合が多いです。
金利が上がりすぎて景気低迷のイメージ


ただし、金利が上がりすぎると企業のコスト削減から消費力が弱まり、景気低迷(リセッション)を引き起こす恐れが出てきます。
※これらはネガティブの判断材料となってしまうのです
要人発言.中央銀行の重要人物
次に、市場に強烈な影響を与える重要人物を2人を押さえておきましょう。
J・パウエル(米国FRB議長)


J・パウエルは、米国FRBの議長で「ジェローム・パウエル」「パウエル議長」などとメディアでは表記されています。
FRBとは、米国の中央銀行のような役割を果たしている公的機関です。FRBが開催する金融政策のミーティングのことをFOMCといいます。J・パウエルがFOMCの協議結果を発表しています。
パウエルの一言一言は為替市場のみならず、経済全体に大きな影響を与えています。
クリスティーヌ・ラガルド(EU/ECB総裁)


クリスティーヌ・ラガルドは欧州中銀の総裁。ラガルド総裁とも呼ばれています。
FRBパウエル議長の次に、注目されている人物です。加速するインフレをどう考えているのか? 利上げは予定しているのか? どれくらいの利上げなのか?
ラガルド総裁の言葉からヒントを得ることができます。
突発的なニュース速報がないか
戦争や災害など、予測不可能な何らかの出来事が発生していないか、ニュース速報を見られる状態にしておきましょう。
例えば「コロナウイルスの感染が急拡大」「ロックダウン相次ぐ」というような重大ニュースが流れれば、市場心理が急激に悪化して、あらゆる金融商品の暴落につながります。
重要な経済指標の発表も、ニュース速報でたいてい報道されます。



とりあえずニュース速報をチェックしていれば、総合的に何が重要な情報で相場が動いているかのヒントになるよ。
とくに重要な経済指標の発表時は注意すること
とくに重要な経済指標
- 米国雇用統計
- FOMC議事録
- FRB政策金利の発表
- GDP成長率
- ISM製造業景気指数
- 消費者物価指数(CPI)
時には数秒~数分で50pips以上動きます。
経済指標の見方や使い方に慣れるまでは、経済指標発表時にトレードはせずに様子を見るだけにしておきましょう。
ファンダメンタルズで分析する方法
ファンダメンタルズで相場分析を行う、最もベーシックなやり方を紹介します。
- ニュースや情報サイトから情報を集める
- とくにトップページ・大見出しの情報は要チェック!
- ネガティブな要素が多いか?
- ポジティブな要素が多いか?
- どちらのニュースがインパクトがあるか?
ネガティブな要素が大きい → 市場心理・投資家心理が悪化する可能性、下降シナリオを念頭に置いておく。
ポジティブな要素が多い → 市場が強気モードになる可能性、買いが進むシナリオを優先したい。
判断が微妙な時 → 上下の変動が激しい、あるいは様子見で値動きが見られない可能性。
経済ニュースをチェックする方法は?
経済ニュースをチェックする方法は3つあります。
- 経済ニュースサイト(オンライン)
- 投資情報サイト(オンライン)
- 新聞・雑誌・マガジン(紙媒体)
ニュース速報は、紙媒体だと遅すぎることもありますので、最低でも1社のニュースサイトのアプリをインストールしておくようにしましょう。



PCでチャートを見ながら、スマホやタブレットを横においておけば、いつでもニュースをチェックできるよ。
経済ニュース・新聞を見るコツ





どんな経済ニュースをチェックすればいいのかコツとかあれば教えてほしいな。



じゃあ次は、おすすめの経済ニュースサイトやおすすめの本、わかりやすい見方・覚え方などを紹介していくよ。
おすすめの経済ニュースサイト
- 日経新聞 → 経済ニュースの定番! 初心者におすすめ
- ロイター → 情報が早いと評判! グローバルなニュースが豊富
- ZAi FX! → 為替専門の情報サイト! 為替情報が早い・充実
- Investing.com → 独自の情報や分析レポートに強み! 一歩踏み込みたい方に
- TRADING ECONOMICS → 経済指標などデータのリサーチに! グラフで見れる
など、まずは試してみてください。
ニュース記事に慣れないうちは無料版で十分です。
見出しや概要だけでもこまめにチェックして、用語に慣れていきましょう。
経済指標カレンダー・リアルタイムの発表
経済指標カレンダーはほとんどのFX業者が無料で提供しています。利用しているFX業者の情報配信ページを調べてみてください。
経済指標が発表されるタイミングは、日本の報道ではたいていタイムラグが生じてしまいます。また、メディアごとに若干のズレもあります。
「ヒロセ通商」が提供している「ロイター経済指標速報」が早くオススメです。
ヒロセ通商 LIONFX
英語版にチャレンジする方法もある
英語版のニュースメディアの方が重要ニュースの発表はかなり早くなります。
などは、とくに早いです。
付け加えるなら、サイトの速報よりもTwitterの方が数秒~数十秒早いことが多いです。
初心者の日経新聞の活用方法 ~最初の1歩
1.まずはトップページ・速報をチェック!


ニュースサイトのトップページ・速報、トップ記事に何があるかをまず確認します。例えば、米国や欧州、ロシア・ウクライナなどの重要な出来事があった場合は要チェックですね。
見出しを軽くチェックして、興味がある記事、理解できそうな記事を開いてみます。
気になる情報があった時はメモに控えておきます。
2.経済・金融・マーケット情報をチェックしてみる


次に、メニュータグから「マーケット」「金融」「経済」の順番にページをチェックしていきます。
上記マーケットのページでは “米国、連続「3倍速」利上げの先は 専門家に聞く” とあります。
ここで、
- 米国の利上げは連続
- 3倍速 → ペースが速いということ?
- 専門家に聞く → 専門家が分析してるんだな
と軽く理解できますね。
米国の利上げのことだから、何となく重要そうだなと判断できます。
では、ページを開いてみましょう。
3.米国の利上げなど重要っぽい記事を開いてみる
ページを開いてみて、意味はわからなくていいので文章に目を通してみます。
すると、「28日発表のGDPはマイナスだった」というのが何となくわかりますね。
さらに目を通していくと、「政策に遅れ、景気後退長引く」とあります。
- GDPマイナスだった → ドルが下がる材料?
- 政策に遅れ → ドルが下がる材料?
- 景気後退長引く → ドルが下がる材料?
というように、ドルに対する不安要素が多いことがゲットできました。
これが相場分析の材料の1つになります。
4.他に興味がある記事を軽く読んでみよう
他にも時間があれば、メニューや見出しを探ってみて、読めそうな部分・興味がある部分のみ軽くチェックしてみましょう。
例えば、スマホでauを使っているなら下記のような記事を簡単に理解できますね。
- KDDIの通信障害は過去最大だった
- デジタル社会のインフラ脆弱性 → 日本のITはこれが弱み?
- ローミングが通信障害を解決する鍵なのか?
などと、日本経済・IT業界についてちょっと知識が得られました。



以上のルーティンを、自分でできる範囲でいいから続けていこう。
これで、どんどんファンダメンタルズのスキルアップができるね。
ファンダメンタルズ 初心者におすすめの本
続けて、ファンダメンタルズの初心者にとっておきの本を3冊紹介します。
投資の基本を学ぶ「インベスターZ(全21巻)」


某私立学園の高校生を主人公に「お金」「投資」の基本を教えてくれる漫画です。
全部で21巻まであり、会社四季報や日経新聞でも取り上げられている優れものです。
ブックオフ、Amazon、LINEまんが、楽天ブックスなどで中古本全巻が入手できます。
初めてでも読み解ける!「経済指標」の見方&読み方決定版
経済指標の見方・読み方の基礎をわかりやすく教えてくれます。
著者はスイス銀行、ナショナル・ウェストミンスター銀行、コメルツ銀行などに勤務経験を持つ国際金融アナリスト。
中古本で1,000円~、Kindle Unlimited版なら無料。レビューでもかなり評価が高いです。
高校生向けの「経済のニュースがよくわかる本」
日本一わかりやすい経済入門書との異名を持つのがこの本。
高校生向けに書かれたようですが、実際には高校生には少し難しいらしく、ちょうど経済を学びたい投資の初心者向けに最適だと評判です。
中古品ならかなり安価に入手できます。



ファンダメンタルズの基礎知識としてすごく役に立つよ!
投資のバイブルになるような一冊をこの機会に探してみよう。
ファンダメンタルズを使いこなすコツ
最後に、ファンダメンタルズを使いこなすためのコツを押さえておきましょう。
「読む」というよりは「見る」
難しい用語は、繰り返して「視界に入れる・見る」ことで覚えていきます。
継続していくうちに、数週間前は難しく感じた言葉でもいつの間にか覚えてしまいます。
だまされたと思ってチャレンジしてみてください。
調べる情報を絞る!
自分にとってわかりやすいテーマやトピックに的を絞って情報収集するのが、ファンダメンタルズを継続していくコツです。
趣味や仕事、何でも構いません。何か1つでも得意なものがあればそこから深掘りしていけます(結局はどんなジャンルも金利やドルにたどりつく?)。
とにかく続ける!
理解しようと思うから、読んでみてわからないとイヤになってしまいます。
思いついた時に、ちょこちょこと経済ニュースに目を通してみるだけです。用語や文章を視界に入れていくだけです。これなら、誰でも簡単に継続していけますね。
とにかく意味がわからなくても目を通す! 長く続けるだけでいろんな用語を覚えて、不思議と内容が理解できるようになるのです。



理解できるようになると、経済・市場の事情がどんどん面白くなってくるんだ!
最初は興味がある情報からチェックしていこう!


用語に慣れる、用語を見る回数を増やす。これがまずはファンダメンタルズを覚えるためのステップです。
用語を覚えて、ある程度読めるようになったら、次に決めるのが自分が得意とするテーマやトピック。
経済情勢のすべてを理解するのはプロでも不可能。
自分が入りやすいトピックに窓口を絞ることがファンダメンタルズを上手に使いこなすコツです。
トピックを絞ることで、そこから深掘り・高度な分析を展開していけるでしょう。
さっそく、分析や勉強は抜きにして単に興味あるテーマを経済新聞や投資メディアから探して目を通してみてください。そして、毎日じゃなくていいので続けてみることです。
1カ月後、数カ月後にいつの間にかレベルアップしている自分に気づけるでしょう。