FXでは「ダマシ」という現象が発生し、予想外の値動きによって損失を抱えるケースがあります。
そのため、トレーダーはダマシを避けつつ適切にエントリーする必要があるものの、ダマシの原因や具体的なパターンが分からなければ上手く対策できないでしょう。
本記事では、FXでダマシが起こるメカニズムと回避方法、注意点を解説します。
ダマシにかかった後の立ち回り方も掲載しているので、トレードの安全性をさらに高めたい方はぜひ参考にしてください。
FXのダマシとは?誰かがわざと騙しているの?


FXのダマシってどんな現象なの? 誰かがわざと騙してるの?



一見すると詐欺をイメージしてしまうけど、FXのダマシは犯罪行為を意味しているわけじゃないんだ。ただ、きちんと把握しないと損失を抱えるリスクがあるから、ここからは具体例も交えて確認していこう。
トレーダーの予測とは逆方向にチャートが変動する現象
FXのダマシとは、トレーダーが想定していた値動きとは逆方向にチャートが変動する現象を指しています。


ただし「上昇するかもしれない」「とりあえず売ってみる」などのボンヤリした予測ではなく、明確な根拠が裏切られなければダマシとはいいません。
たとえば、三尊というチャートパターンが発生した際は下落方向へトレンド転換するのがセオリーであり、売り注文の根拠として活用が可能です。
三尊とは
相場の高値付近で出現しやすいチャートパターンで、三つの山を作る姿が「三尊仏」に似ていることが名称の由来。逆に3つの谷を作るチャートパターンを逆三尊と呼ぶ。
具体的には、中央の山が最も高くなり、両脇は少しだけ安値で折り返す形となります。


しかし、下図のように「三尊が出現した後は下落する」という一般的な考え方とは反対方向へ動くケースもあり、結果的に市場予想を覆すダマシになるのです。


明確な根拠を持ってエントリーしても、ダマシになれば大きな損失を抱えてしまうので、FXのトレードをおこなう上では最大限に注意しておきましょう。
FXのダマシにはさまざまなパターンがある
FXのダマシはさまざまなパターンが存在するため、トレードの安全性を高めるには当然それぞれのパターンを把握しておかなければなりません。



三尊のダマシについては分かったけど、それだけじゃ不十分なのかな。



ダマシのパターンはトレーダーが使う根拠と同じ数だけあるから、結論からいうと三尊だけでは不十分だね。ここからは3つの種類に分けて確認していこう。
インジケーターのダマシ
FXのインジケーターは、将来的な値動きを分析する際に重宝しますが、ダマシによって本来のセオリーが裏切られるケースも少なくありません。
たとえば、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けるゴールデンクロスは、価格上昇が見込めることから買い注文のサインとして役立ちます。
【赤ライン:25日移動平均線 青ライン:75日移動平均線】


しかし、ダマシの場合はゴールデンクロスが発生したにもかかわらず、下落方向へチャートが変動するのです。


ゴールデンクロスの逆パターンとなる「デッドクロス」も、ダマシが起これば売り注文のサインとして機能しなくなるので、きちんと価格動向を観察しながらエントリーするのがおすすめですよ。
ブレイクアウトのダマシ
ブレイクアウトのダマシも代表的なパターンの1つとなっており、チャートが一定のラインを抜けたと見せかけて結局元の水準に戻ってくることがあります。
ブレイクアウトとは
トレーダーから意識されている一定のラインを突き抜ける現象。そのまま強い値動きが発生してトレンドを形成するのが基本のセオリー。たとえば、レジスタンスラインは価格上昇が抑えられているラインであり、下落を支えている場合はサポートラインと呼ばれる。
下図はレジスタンスラインにおけるダマシの例であり、ブレイクアウトのタイミングで買いエントリーしたトレーダーは大きな含み損を抱えてしまうでしょう。


加えて、高値と安値同士を結んだ「トレンドライン」でもダマシに注意しなければなりません。
以下は上昇トレンドを形成中のUSD/DKKですが、ブレイクアウトをきっかけに相場転換したかと思いきや、再度トレンドを継続していることが分かりますね。


チャートパターンのダマシ
FXではチャートパターンのダマシにも注意が必要であり、どれだけ綺麗な形状を描いたとしても予想を裏切られるケースがあります。
ここでは、上昇トレンドへの転換サインとして活用されている「逆三尊」を例に見てみましょう。
【逆三尊のダマシ例】


逆三尊が完成すると上図の青矢印に向かってチャートが動くはずですが、ダマシの場合は真逆となる下落方向へ変動してしまうのです。
その他のチャートパターンについては以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。


FXのダマシのメカニズムとは?





FXのダマシの具体的なパターンは分かったけど、どうしてこんな現象が起こるのかな?



ダマシを理解するには発生するメカニズムも知っておいた方が良いね。ここからは主な原因を3つ確認していこう。
大口・機関投資家によるトレードの影響
FXのダマシは、大量の資金を保有する大口トレーダーや機関投資家のトレードによって発生するケースがあります。
機関投資家とは
顧客から預かった資金を代わりに運用する法人を指しており、保険会社やファンドが挙げられる。日本国民の年金積立金を扱うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用額は数百兆円にも上る。
より具体的なイメージをつかむために、ここではブレイクアウトのダマシを例に確認しましょう。


1の位置でブレイクアウトを期待し始めたトレーダーは、レジスタンスラインを超えた時点で買い注文を入れます。
しかし、2で大口・機関投資家が保有中の買いポジションを売却し、さらに売り注文を増やすことでチャートが下落して、ダマシが起こるのです。
そして、3の付近では2で買いを入れたトレーダーが慌てて損切りと空売りをおこない、十分に利益が乗った位置で大口・機関投資家は売りポジションを利確します。
参考までに、上記のような動きはFXの相場で頻繁に発生するため、常に多くのトレーダーが警戒していますよ。
レジサポも使わないですね。
— らびっち@RR=3~10以上 (@MustWin_FX) June 28, 2022
水平線も引かない。
大口の抵抗がどこにあるのか?
どこを抜けたら自分の想定が崩れるのか位しかみてない。
会社で海外メンバーが話すこと全部分かるようになったのは実は海外コースに参加してから。
やっぱり好きなことはその人の能力を伸ばすよね。
大口・機関投資家は相場の流れを作り出す重要な存在なので、しっかり動向を注視していきましょう。
短期足の細かな値動きしか見ていない
短期足の細かい値動きしか見ていないと、長期足の相場転換サインやトレンドに気づけず、ダマシにかかる可能性があります。
もし、1分足や5分足などで上昇方向にブレイクアウトしても、その直上に4時間足や日足のレジスタンスラインが隠れていれば、すぐに元の水準へ価格が戻ってしまうでしょう。


短期足が主戦場となる「*スキャルピング」で特に陥りやすいダマシのパターンでもあるので、長期足の様子もしっかり分析しておくのがおすすめです。
*スキャルピングとは、数秒~10分程度の間に何度もトレードを繰り返す手法
採用している売買サインが相場と合っていない
トレードで採用している売買サインが相場と噛み合っていない場合も、ダマシの原因となる可能性があります。
たとえば、下図は25日移動平均線を表示させた4時間足チャートであり、下から上へブレイクアウトしたにも関わらず上昇が抑えつけられていますね。


一見するととても不可解な現象に思えますが、まったく同じチャートに75日移動平均線を表示すると、上図の「見えないレジスタンスライン」の正体が明確に判断できますよ。


すなわち、75日移動平均線ならセオリー通りとなる一方、相場に合わない25日移動平均線を使っているトレーダーにとってはダマシになってしまうのです。
もちろん、種類の異なるインジケーターを組み合わせても同様のリスクがあるので、以下記事を参考にそれぞれの特徴を把握しておきましょう。


FXのダマシを回避する5つの方法





FXのダマシが発生する原因は分かったけれど、回避する方法も具体的に知っておきたいな。



ダマシを避ける方法は大きく分けて5つあるから、それぞれ詳しく確認していこう。
流動性が高い通貨ペアをトレードする
FXのダマシは、大口・機関投資家のトレードによっても発生するため、特定の人物、あるいは団体がおこなった注文の影響を受けにくい通貨ペアを選ぶのがおすすめです。


ダマシを引き起こす注文より、セオリー通りにトレードする人の注文量が勝てば、予想外の値動きも減少するでしょう。
USD/JPYを始めとするメジャー通貨の特徴に関しては、以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。


長期足のトレンドを確認する
FXのダマシを回避する上では、長期足のトレンドも忘れずに確認した方が良いでしょう。
下図はEUR/USDの1分足チャートであり、堅調に上昇トレンドを形成しているように見えるので、思わず買い注文を入れたくなりますね。


一方、4時間足では大きな下落が始まる直前となっており、もし買いポジションを持てばダマシになって大きな損失を抱えてしまうでしょう。


また、短期足より長期足の方が売買サインなども反応しやすい特徴を持っているため、エントリーの際は1時間以上のチャートをチェックする癖をつけてください。
一度に大きな通貨量でエントリーしない
一度に大きな通貨量でエントリーせず複数回に分散すれば、ダマシにあった際の損失を軽減できるでしょう。
たとえば、50万円でトレードしている場合に以下のポイントで一気に資金をつぎ込んでしまうと、ダマシが発生した際に大きな含み損を抱えてしまいます。


しかし、以下のように様子を見ながら小分けにすると、損失を抑えられる上にダマシが起こった後の方向へもエントリーできるのです。


売買サインを見つけた際は、つい利益を狙って通貨量を増やしたくなるところですが、一旦立ち止まって少ない通貨量に調整するようにしてくださいね。
過去の類似チャートをチェックする
FXの相場は過去の類似チャートに似た動きとなるケースが多く、トレンドや反発ラインだけでなくダマシも再現される可能性があります。
そのため、できる限り形状が近いチャートを探し出して、価格動向をチェックするのもおすすめです。



類似チャートをチェックするのはかなり効果が見込めそうだけど、探し出すのが大変そう。



最近は自動で類似チャートをピックアップしてくれるツールも無料提供されているから、特に便利なものを紹介しておこう。
類似チャートのチェックにおすすめのツール
類似チャートは手作業で探すとかなりの手間がかかってしまうので、一部のFX会社が提供している無料ツールを使うと良いでしょう。
下図の「ぱっと見テクニカル」はFXプライムbyGMOの専用ツールであり、一致率の高いチャートを瞬時に表示してくれます。


また、ヒロセ通商の「さきよみLIONチャート」なら3つの類似チャートを一度に確認できるため、より効率的にダマシの分析がおこなえますよ。


自分にマッチするツールを選んで、できる限りダマシを避けていきましょう。
売買サインが出ても飛び乗らない
とてもシンプルな手法となりますが、もし売買サインが出現してもすぐに飛び乗らず、一旦相場の動向を観察するのも効果的なダマシの回避方法となります。


上図のように、少しエントリーを遅らせても方向性さえ合っていれば十分な利益が見込めるので、焦らずにきちんと売買サインが機能したかどうかを確認してからエントリーしましょう。
ダマシにかかった後の対策2つ





回避方法は分かったけど、もしダマシにかかってしまったらどうすれば良いの?



残念ながら約定した注文を取り消すことはできないけど、適切に対応すれば損失は最小限に抑えられるはず。ここからは2つの対処方法を見ていこう。
ポジションを損切りする
FXには約定した注文を取り消す機能が存在しないので、ダマシにかかってしまった際は気づいた時点ですぐにポジションを損切りしましょう。
口座資金を守る上では必要不可欠な手法であり、Twitterでも多くのトレーダーが推奨していますよ。
トレードで生きている人達が何故損切は絶対にするべきと話しているのでしょうか🤔
— ruma@専業 (@FxRumasan) June 17, 2022
それは大損の恐怖を覚えているからです。
FXは『儲かる』という魅力だけではなく『大損』という怖い一面もあります。なんなら後者の方が色濃いです。
皆さんが退場しない為にも損切の話は何回もしていきます!
一方、損失を確定することに躊躇してしまう場合は、あらかじめ逆指値注文を入れて機械的に実行される環境を整えておくのもおすすめです。
逆指値注文とは
保有ポジションに含み損が発生する方向へチャートが変動した際、自動的に決済される注文方式。買い注文なら上昇した価格、売り注文なら下落した価格に設定が可能であり、FX会社のツールには基本的に標準搭載されている。
また、損切りルールの決め方については、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてくださいね。


損切りせずに様子見するのはリスクが大きい
ダマシが発生した後も、口座資金を減らしたくない感情からつい様子見したくなるかもしれませんが、結論からいうとすぐに損切りした方が良いでしょう。
たとえば以下のようなダマシで売りポジションを持ち、損切りせずにそのままホールドしたと仮定します。


もう一度ブレイクアウトすれば利益転換するものの、下図の通り堅調に上昇トレンドを推移し、最終的には多大な損失を抱えてしまう可能性が高いのです。


小出しに損切りする
ダマシの後に利益転換する見込みがある場合は、一度にすべてのポジションを損切りするのではなく、一部だけ決済しておくのもおすすめです。


もし、ダマシの後に当初期待していた通りの価格変動が発生すれば、損失を最小限に抑えつつ利益が得られるでしょう。


ただし、ダマシの後に利益転換する保証はないので、あくまでも手法の1つとして参考にしてくださいね。
FXのダマシの注意点2つ



FXのダマシにかかった時は損切りが大切なことは分かったけど、注意点はないの?



ダマシの注意点は主に2つあるから、今後のトレードのためにもきちんと押さえておこう。
ダマシを完璧に避けるのは難しい
FXのダマシにはいくつかの回避方法がある一方、完璧に避けるのは難しく、トレードをおこなう限り付き合っていく姿勢を持たなければなりません。
Twitterを見ても、多くのトレーダーが自己流の対策を見いだしつつ、常にダマシと向き合っていますよ。
騙しに関しては僕はエントリーのタイミングを遅らせたり、すぐのところに損切りのラインを引くようにしています。
— シュンペーダーFX@ポンド (@syunsyunfran) June 28, 2022
FXのダマシはしっかりと向き合っていくしかないので、はやめに損切りすることが大切ですね。
思い通りの値動きにならない点はもどかしく感じるかもしれませんが、大切な資産を守りつつ利益を積み重ねるためにも、適切に対処していきましょう。
初心者のうちはダマシを利用したエントリーは控える
トレーダーの中には逆にダマシを利用して利益を狙う猛者も存在する一方、トレード手法の難易度が高いため、初心者は控えた方が良いでしょう。
【ダマシを有効に使っていく技術】
— ruma@専業 (@FxRumasan) June 25, 2022
*レンジだけでなくチャネルや三角保ち合いなどのパターンでも使う事ができます。 pic.twitter.com/Sh6WHQCSC4
上図で解説している「フェイクセットアップ」は、ブレイクアウトのダマシが発生した後に反対方向へエントリーする方法です。
概要だけなら簡単そうに思えますが、そもそもダマシなのかどうかを見極められなければ成立しないので、初心者は混乱してしまう可能性があります。
そのため、まずは回避方法や損切りといった基本から習得し、十分なスキルを身につけてから実践してみてください。
FXのダマシを理解して投資の安全性を高めよう





FXのダマシを理解すれば、トレードの安全性を高められそうね。



FXのダマシにはさまざまなパターンがあるけど、それぞれの特徴を把握して適切に対処すれば、最大限に回避できるんだ。もしダマシにかかってしまっても、きちんと損切りすれば損失を抑えられることも分かったね。
FXのダマシを回避するには以下5つの方法がおすすめ。
- 流動性が高い通貨ペアをトレードする
- 上位足のトレンドを確認する
- 一度に大きな通貨量でエントリーしない
- 過去の類似チャートをチェックする
- 売買サインが出ても飛び乗らない
上記を踏まえてトレードをおこなえば、より安全性を高めて利益を積み重ねられるでしょう。
今回は、類似チャートの分析に特化した無料ツールについても解説したので、ぜひ本記事を参考にして自分に合った方法を見つけてくださいね。