
ねえ、今FXで注文を入れたらかなり滑って約定しちゃったんだけど……。



それはスリッページだね。時には利益を伸ばせなかったり、損失が大きくなる原因になったりもするから、原因と対策の仕方をしっかり理解しよう。
FXでは、注文価格と約定価格がズレるスリッページが発生することがあります。
スリッページはトレーダーにとって有利・不利どちらにも働く可能性があるものの、意図せず大きな損失を出してしまうケースも考えられます。そのため、できるだけ発生しないように対策しておくことが欠かせません。
そこでこの記事では、スリッページが発生する原因から対策まで詳しく解説していきます。
スリッページの幅をトレーダー側で操作する許容スリッページの設定方法も説明するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
スリッページとは?


スリッページとは注文時のレートと実際に約定したレートの間に生じた価格のズレのことで「滑る」といわれる現象を指します。
注文発注から約定完了までは、体感だとごくわずかな時間です。しかしFX市場は1秒未満のスピードで価格が変動しているため、インターネットを通じて処理が行われ、約定するまでの短い時間でも為替レートが変わってしまうことがあります。
スリッページはトレーダーにとって有利に働くこともありますが、上記例のように損失が発生してしまうケースもあるので、あらかじめスリッページ対策を行っておきましょう。
《注意喚起》
— トキ@FX検証屋 (@ToKiGaMi123) June 28, 2022
FXのスペースで偶然耳にした話ですが、ほとんどの証券会社が『ネガティブスリッページ』へ偏るそうです。
理論上スリッページはトレーダーに有利な方向にも働く筈ですが、実情では不利な方向へのみ発生します。
だから検証では、”スプレッド+α”の取引コストで設定するのが鉄則ですよ。
スリッページが起きる3つの原因


スリッページ対策を立てるために、まずはスリッページが発生する原因をまとめていきます。
先ほど説明したように、スリッページは注文発注から約定完了までの間に生じるタイムラグによって発生します。しかし、タイムラグが起こる要因はサーバーの性能が劣っている場合だけに限りません。
スリッページの原因によってトレーダー側で対処できるもの、できないものがある、というのを知っておきましょう。
原因1.タイムラグが発生している
スリッページが起こる主な原因は、注文から約定までの間に発生するタイムラグです。
FXで売買の注文を入れると、見た目では即時に成約しているように見えても内部ではいくつもの処理が行われています。
注文発注から約定完了までの具体的な流れは以下の通りです。
- トレーダーによる注文発注
- 注文をFX取引所のサーバーへ送信
- FX取引所が注文受付
- 注文の約定完了
為替レートが急変したり多数の注文が重なるとサーバーの処理が追いつかずにタイムラグが発生することがあります。タイムラグが起こると約定完了までのスピードが落ちるため、その間に為替レートが動いてしまいスリッページにつながるのです。



タイムラグって、普段からよく起こるのかしら?



スリッページするほどのタイムラグとなると、経済指標発表など特定のタイミングだね。中にはスリッページ率を公開しているFX業者もあるから、口座開設の時にチェックしておくと良いよ。
原因2.市場参加者が少なく注文量が減っている
市場全体の注文数が少ない場合も、スリッページが発生しやすくなります。
FX市場にはトレーダーが出した多数の注文が流れていて、注文同士で売買が成立すれば約定となります。しかし、24時間開いているFX市場であっても常に同じ量の注文が出回っているわけではありません。
日本時間5時などの朝方や年末年始など市場参加者が減少するタイミングだと、成立する注文が市場にない場合も考えられます。成立する注文が見つからず処理が滞ると、その間に為替レートが変動しスリッページが発生する要因になります。
原因3.FX業者が意図的にスリッページを発生させている
やや特殊なケースとして、FX業者が意図的にスリッページを発生させている可能性も0ではありません。
国内FX業者が導入しているDD(ディーリング・デスク)方式という取引方式は、トレーダーの損失が会社側の利益になる仕組みです。そのため、注文がFX業者にとって不利と判断された場合、スリッページによって約定レートを操作して意図的にずらされてしまうことがあります。
注文の処理内容はトレーダーには公開されないので、わざとスリッページを発生させているかどうか確証を得る手段はありません。しかし、特定のFX業者でスリッページが異常に多いなどの評判を目にしたら利用は避けるべきでしょう。
FX業者によってはスリッページの少ない口座を用意していることもあるので、そういった口座を選ぶことも有効です。
スリッページを防ぐための対策


FX業者による意図的な操作は別として、スリッページはトレーダー側でもある程度は対策できます。
どんなにスリッページが少ないFX業者でもタイミング次第ではスリッページの発生確率が上がってしまうので、トレーダー側が意識的に対策を取ることも大切です。どのように行動すればスリッページを起きにくくできるか、具体的に解説していきます。
指値注文を使う
スリッページを発生させないための最も有効な手段は、指値注文を利用することです。
FXでは基本的な注文方法として成行注文と指値注文の2種類があり、それぞれ表にまとめたようなメリットとデメリットがあります。
注文方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
成行注文 | 指値注文よりも優先的に売買が成立する | スリッページが発生し不利なレートで約定するリスクがある |
指値注文 | 基本的にスリッページが発生せず希望価格で売買が成立する | 指定した価格で売買できない場合は約定されない |


厳密にはどちらでもスリッページは発生するのですが、指値注文はそもそもトレードにとって有利な価格を指定して予約注文を入れる方法です。
指値注文ならスリッページが発生したとしてもトレーダーにとって有利な結果になるので、スリッページを発生させたくない場合は積極的に利用しましょう。



指値注文ならスリッページは発生しないのね。今度から全部指値注文にしようかな。



いや、指値注文も万能じゃないんだ。スリッページは防げても指値以外では約定できないから、取引回数自体減ってしまう可能性がある。成行注文と指値注文は使い分けが大切だよ。
相場が荒れている時・市場参加者が少ない時は取引しない
スリッページが発生しやすい相場での取引を避けることも、スリッページ対策として重要です。
アメリカ雇用統計などの大きな経済指標発表や、要人発言が予定されているタイミングは注文量が一時的に急増します。するとサーバーが注文を処理しきれずにスリッページが発生しやすくなるため、取引は避けましょう。
注文量を少なめにする
一度に発注する量を少なめにしておくことも、有効なスリッページ対策です。
市場に流れる注文同士で売買が成立すれば約定するというFXの仕組み上、発注する金額が大きくなるほど成立は難しくなります。そのため、高額取引の場合は全額を一度に注文するのではなく、2つの注文に分割するなど工夫するとスリッページ防止につながります。
とはいえ、スリッページの発生原因となるほどの注文量となると100万通貨や1,000万通貨です。仮にレバレッジ25倍でドル円(USD/JPY)を100万通貨取引するとしても、最低400万円~500万円は資金が必要なので少額取引の場合は当てはまりません。
1,000通貨や1万通貨での取引であれば過度に気にする必要はないでしょう。
許容スリッページのおすすめ設定値


ここまでスリッページの原因について説明してきましたが、相場変動が激しい時は指値注文でも約定できないという弱点があります。
そこで、
- スリッページの許容範囲内をあらかじめ決めておきたい
- 大きくズレたところで約定させたくない
このように考えている場合は、許容スリッページの設定をしておきましょう。
許容スリッページとは言葉の通り、「どのくらいまでならスリッページを許容するか」という設定です。許容スリッページで設定を5pipsにすれば、5pipsまでのスリッページは約定し、それ以上のズレは売買を見送るといった操作ができます。


許容値の初期設定は0~5pips、中には100pipsとしているFX業者までさまざまですが、トレードスタイルやニーズに応じて設定を変更しておきましょう。各パターンごとのおすすめ許容値は以下の通りです。
パターン | おすすめ許容値 |
---|---|
15分足以下、スキャルピングの場合 | 0~0.3pips |
安定的に約定率を高めたい場合 | 0.3~3pips |
1時間足以上、スイングトレードの場合 | 3~10pips |
なお、許容スリッページは0に設定しておきトレーダーにとって不利な約定を全て拒否することもできます。
ただ、許容値が0だと約定できないことも増えてしまうため、取引チャンスを逃しやすくなります。スリッページ防止を優先するなら指値注文を使い、成行注文ではある程度余裕を持って許容値を設定しておくと効果的でしょう。
たびたび約定拒否される
— ともちん (@TomFuk123) June 16, 2022
つらたん
許容スリッページ1.0pipは狭すぎるのかなぁ
MT4で許容スリッページを設定する方法
許容スリッページの設定方法はFX業者によって違いますが、ここでは一例として世界中で使用されている取引プラットフォームMT4で解説していきます。


MT4で許容スリッページを設定するには、上部メニューバーの「ツール」から「オプション」を開きます。


続いてタブの中から「取引」をクリックし上のような画面になったら、「価格誤差のデフォルト」でスリッページの許容値を入力しましょう。
入力が終わったら「OK」ボタンを押せば、許容スリッページの設定は完了です。
スリッページは許容範囲内を決めてトレードすることが大切


スリッページが完全になくなることはありません。
スリッページは注文した時の価格とズレて約定してしまう、というトレーダーにとって不利な結果を招く場合があるためトレーダー側で対策ができます。
スリッページの対策自体はとても簡単で、指値注文の活用や許容スリッページの設定をしておけば、価格のズレを限定できるのと、意図せず大きな損失を負ってしまうリスクも抑えられます。
トレーダーの知識と工夫次第でスリッページによる損失は最小限にできるので、今回解説した内容を見返してすぐに設定しておきましょう。