
USDが有名なのはわかるけど、そもそもどんな通貨なの?



USDはアメリカが発行するお金で、流通しているドル紙幣は正式には「連邦準備券」という名前なんだ。イギリス領や日本の一部地域にも流通している世界の基軸通貨だよ。
本記事ではUSDの基本知識や初心者におすすめの理由を解説します。
FXでメジャーな3つのUSD通貨ペアについても確認できるため、今後チャレンジしたいと思っている方もぜひ参考にしてくださいね。
USDとは?使えるのはアメリカだけじゃない?
USDはニュースや身近なお店でも見かけるほどの有名な通貨であり、もちろんFXにおいても大きな影響力を持っています。
USD価格に合わせてレートが変動する通貨も多く世界中のトレーダーがトレードしているので、USDを分析すれば相場全体の状況が見渡せるでしょう。
USDとは
USDはアメリカ合衆国の連邦準備銀行(通称:FRS)が発行する通貨で「連邦準備券」以外にも次のような呼び方があります。
- 米ドル
- アメリカドル
- ドル紙幣
アメリカ国内でモノやサービスと交換できるだけでなく世界の基軸通貨としても採用されているので、誰でも一度は聞いたことがあるでしょう。
基軸通貨とは?
ユーロやポンドといった世界的に流通している通貨の中でも、為替などの国際金融取引で基準になっている通貨。1945年まではポンドが主流だった。
国際的な決済シェアも実に4割程度を占めており、日本円との差は10倍と圧倒的です。
出典:Bloomberg|人民元、世界での決済シェアが5年ぶり高水準-SWIFT
USDは世界中に流通している通貨の中心的な存在であり、FXの相場分析でも欠かせない要素となっています。
USDが使える国
USDはアメリカ以外にも導入されており、各国の法定通貨と同じようにモノやサービスを購入できます。
- カナダ:1ドル=1.25カナダドル換算
- カンボジア:1ドル=4,082カンボジアリエル換算
- エクアドル:米ドルが公式通貨
- エルサルバドル:米ドルが公式通貨
カナダでも米ドルが使えるから喜んだ。やった!120ドルが陽を浴びる機会がきた!
— TENPA (@TENPA_green_tea) June 2, 2012
上記の他にヴァージン諸島などのイギリス領地ではUKポンドと同じく流通し、日本でも米軍基地周辺なら日本円と変わらず利用可能です。
ただし「カナダドルをアメリカで使う」といった逆のパターンは基本的に受け付けてもらえないので、海外旅行の際は注意してくださいね。
アメリカ以外の国でも〇〇ドルと呼ぶのはなぜ?ドルペッグ制とは?





USDが世界的に流通していることはわかったけど、ドルの名前がついた他の通貨は何も関係がないの?



結論としてはすごく関係があるよ。ドルペッグ制やカレンシーボード制といったUSD価格と連動している仕組みを採用しているから、それぞれ詳しく確認していこう。
ドルペッグ制
ドルペッグ制はUSDと自国の通貨の価格を連動させて、経済の安定性を維持する仕組みです。
ペッグ制とは開発途上国などが関連性の高い経済国と為替レートを連動させる仕組み。世界的な基軸通貨であるUSDを対象とする場合に「ドルペッグ制」と呼ばれる。
実際のレートもよく似た動きとなるケースがあり、多くのトレーダーがトレードに生かしていますよ。
久しぶりにドル円見たけどびっくり。
— Yuta japan.hongkong🇯🇵🇭🇰 (@JPHKyuta1) June 3, 2022
5日で約4円ほど動いてる。ドルペッグの香港ドル円もそれに伴い急上昇。
ボーナス時期に一気に円に替えようとと思ってたところ、急激に円高に振れたのでそう上手くいかないものだと思ってたけど、大どんでん返しで上手くいきそう。#為替 pic.twitter.com/0ReNFZbqob
経済大国であるアメリカのUSDとペッグ制にすればさまざまなメリットがある一方、同じくいくつかのデメリットもあります。
ドルペッグ制のメリット
- アメリカとの貿易収支が安定する
- 自国通貨の価格変動リスクを抑えられる
ドルペッグ制のデメリット
- 自国が不況の時にUSDが高いと輸入コストの負担が増える
- アメリカの金融政策とも連動するので自由に制度を変えられない
USDとドルペッグ通貨のペアを取引する際は、両方の側面を押さえておきましょう。
カレンシーボード制
カレンシーボード制は自国が発行した通貨と同程度の量のUSDを中央銀行が資産として確保しておく仕組みです。
具体的な内容を把握するために、ここではカレンシーボード制とそうでない場合の違いを確認しておきましょう。
【通常の仕組み】
為替相場や国民に配っている通貨 | 資産 |
自国の通貨 | 80%を自国の通貨で保有 |
自国の通貨 | 20%をUSD |
上表の内訳では自国の通貨が大量に売られた場合に保有資産の価値が下落し、特に開発途上国は経済ダメージが大きくなってしまいますね。
それまでの資産額が1億円だったものが、ある日突然100万円になる可能性もあるのです。
【カレンシーボード制】
為替相場や国民に配っている通貨 | 資産 |
自国の通貨 | 100%をUSDで保有 |
カレンシーボード制の国は資産をUSDとして確保しているので、もし自国の通貨が大幅に下落しても価値が安定しているUSDで補填できます。
自国の通貨を発行するたびにUSDを調達しなければならないデメリットはありますが、ドルペッグ制と組み合わせればより経済的な安定性が保たれるでしょう。
ドルペッグ制の通貨例
ドルペッグ制の通貨は以下のとおりで、全体的に開発途上国が多い印象です。
- 香港ドル
- パナマ・バルボア
- バミューダ・ドル
- 中東の一部地域
香港ドルに関してはカレンシーボード制も採用しており、1ドルあたり7.75~7.85HKDの変動幅を保っています。
USD/HKDの週足チャート
USDは単なるお金としてだけでなく、経済の安定性を維持するためにも用いられるほど信頼されている基軸通貨です。
FXの相場分析を行う上では、USDを主軸にすれば世界全体の景気動向がわかるでしょう。
FXでメジャーな通貨ペア3選!
出典:FXGT



USDがたくさんの国で活用されているのはわかったけど、具体的にFXではどんな通貨ペアがトレードされているの?



USD通貨ペアの中でも特に取引量が多い銘柄を3つ紹介しよう。初心者におすすめの通貨ペアも解説するからぜひ参考にしてみて。
1位はUSD/EUR(米ドル/ユーロ)
USD/EURはトップクラスのシェアを誇る通貨同士のペアであり、FXでの取引量も世界一です。
イギリス市場が開く日本時間16時以降から値動きが活発になる傾向ですが、流動性が高いため基本的にボラティリティ自体は程よい水準となっています。
ユーロドルや豪ドル円などの通貨ペアは、ボラティリティが安定しているので、利益を出しやすいです。ユーロ円は変則的な動きが少なく、トレンドが発生しやすい傾向にあるので、値動きを予想しやすいです。
— Yoshie@1分足スキャルピング専業デイトレーダー (@Yoshi69166730) June 5, 2022
⇒https://t.co/iCEO09kEnq
ただしアメリカとヨーロッパの政策金利発表や米雇用統計の際は、短期的に100pips程度の乱高下が発生することも珍しくありません。
深夜2~3時頃に主要な経済指標が発表されるケースも多いので、リスクを管理しつつ生活スタイルに合わせて取引した方が良いでしょう。
2位はUSD/JPY(米ドル/円)
USD/JPYは最もメジャーな通貨ペアの1つとなっており、取引量は13.2%で2位にランクインしています。
多くのトレーダーが参加しているため流動性が高く、緩やかな値動きの中でトレードできるでしょう。
【USD/JPY4時間足チャート】
日本の経済指標は午前中から午後にかけて発表されるので、価格変動に備えやすいのも魅力の1つといえます。
3位はGBP/USD(英ポンド/米ドル)
GBP/USDは取引シェア3位の通貨ペアですが、USD/JPYやEUR/USDに比べて流動性が低くボラティリティが高い特徴があります。
ポンドドルが急に目覚めた感じ。
— Trader Kaibe (@K_FLASHES) May 8, 2020
コロナショック以降のポンドドルはボラティリティ大きくて面白いんだけど、読めない(分析しにくい)から、裁量トレードにはなかなか踏み切れない。 pic.twitter.com/vr2ySkzJVr
変動幅が大きいので利益が狙えるものの、値動きが予想しにくいことからトレードを控えるトレーダーも多いようですね。
またイギリスはスコットランド地域に「北海油田」を持っているため、原油価格の動向に影響を受ける資源国通貨としての側面もあります。
資源国通貨とは原油や鉱石といった資源の収益割合が大きい国の通貨。油田を持つイギリスや鉄鉱石を輸出するオーストラリアが代表的。
GBP/USDをトレードする際は取引量をコントロールするなどしてリスクを抑え、原油価格や経済指標についてもチェックしなければなりません。
初心者におすすめな通貨ペアはUSD/JPY(米ドル/円)
3つのメジャー通貨ぺアの中では、以下の理由からUSD/JPYが最も初心者におすすめです。
- 売値と買値の差額であるスプレッドが狭く取引回数が多くても利益を得やすい
- 1日の値動きが数銭~1円程度と価格変動リスクが低い
出典:外為ジャパン
さらにUSD/JPYを専門に扱うトレーダーやベンダーサイトが豊富なので、情報収集しやすい点も大きなメリットといえるでしょう。
一方、2022年に入ってからは円安相場が続いており、トレンドに逆行すると損失が膨らんでしまう可能性があります。
ドル円が132円をつけた。
— アンゴロウ@暗号資産 (@angorou7) June 6, 2022
132円台をつけるのは約20年2ヶ月ぶり。 pic.twitter.com/bSh1hOlfm9
2022年6月時点では20年ぶりに132円に到達し、Twitterでも話題になっているようです。
そのため、USD/JPYにチャレンジする際はきちんと相場分析を行った上で、少額資金から始めてみましょう。
FXにおけるUSD(米ドル)の上昇理由は?



USD/JPYがおすすめなのはわかったけど、USDが上昇する理由も知りたいわ!



USDはさまざまな要因で上昇する可能性があるから、4つのポイントに分けて確認していこう。
世界情勢
特定の国同士の軍事衝突や金融リスクなどが高まるタイミングでは、保有資産をドルに替える(ドル買い)動きが強まる傾向です。
ドル円の推移は、コロナショック時のパニックで乱高下した時に
— 銀ちゃり〝紫獅〟 (@saoif_silver) June 4, 2022
基軸通貨の「ドルを買う事が最も安全」と理由で買われた。
「有事の円買い」はそこから薄れてきて、現在の戦争や利上げ、量的引き締めというリスクオフの相場ではやはりドル買いが安心だよね
って事でドル高なんだと思ってる。
こういった市場心理は「有事の米ドル買い」と呼ばれており、過去には米同時多発テロやギリシャ危機でも発生しました。
ただし、同じく暴落リスクが低い円も買われやすくなるため、USD/JPYの場合は注意深く動向を観察しましょう。
要人発言
USDの上昇要因としては、中央銀行当局者や政府官僚、財務官といった要人の発言も挙げられるでしょう。
アメリカの景気が上向いていることを認めればドル買いが加速し、物価高に言及したなら近日中にインフレ抑制に向けた利上げが実施される可能性があります。
利上げとは政策金利を上げる金融政策を指しており、基本的には通貨の高騰を引き起こします。
また要人のドル高容認発言としては、トランプ元大統領の強気な政策が記憶に新しいですね。
【強いドル】ってなんですか?
— Aki (@aki_fx1) May 14, 2020
まさかトランプさんがこんなこと言い出すなんて…いきなり方向転換、すごい人だな。
個人的にはドル高を待ってたので流れが変わると助かる。本日21:30失業保険申請件数は雇用統計後ということで再び気になるところですが…
※22:30頃から配信繋ぎます。 pic.twitter.com/k6paD5vbnD
FXを始めたばかりのうちは「どの情報がドル高につながるか」がわからないかもしれませんが、少しずつ経験を積んで慣れていきましょう。
金融政策
金融政策は最も市場が反応しやすい上昇要因の1つであり、特に金融引き締めによる利上げは欠かさずにチェックした方が良いでしょう。
金融引き締めの発表、あるいは観測が強まると、金利が高いUSDを買って利息を得ようとする需要が拡大する傾向です。
もちろん必ず上昇する保証はありませんが、USDをトレードする場合は政策金利発表のスケジュールを欠かさずに把握しておいてくださいね。
経済指標
経済指標発表はアメリカの景気が判断できる重要なイベントであり、市場の予想以上に良好な数値であればドル買いにつながる可能性があります。
【主な経済指標】
米雇用統計 | 毎月第一金曜に発表されるアメリカの雇用率を示した指標 |
FOMC声明・議事録 | 金融政策を決定する委員会の声明。3週間後に議事録が発表される。 |
フェデラル・ファンド金利(FF金利) | 中央銀行が目指す金利目標であり、実質的な政策金利として認知されている。 |
国内総生産(GDP) | 国内全体が生み出すモノやサービスの価値。数値が高いほど国の生産力が強い。 |
ISM製造業景気指数 | 製造業の役員から受注・生産・雇用といった項目を聴取した指標。前月より好結果なら景気が良くなっていると判断される。 |
消費者物価指数(CPI) | 物価の変動率を示した指標。国民の生活水準とインフレの度合いが判断できる。 |
そして、アメリカの経済指標は他国の通貨にも影響を与えるほど重要視されており、その中でも雇用統計は強い上昇につながるケースが少なくありません。
ドル円 6月6日(月)
— REINIII@為替×資産形成 (@Reinyy_Rein) June 6, 2022
さて、今の所は先週の環境認識で上げた通りの結果へとなってますね。
また、先週の雇用統計もドル買いな結果に繋がり更に上を目指す動きでしたね。今週、意識する事は押し安値の129.669と5月頭に付けた高値131.279の2つになります。
この2点意識しながら見て行きましょう。 pic.twitter.com/ynH908PzOW
経済指標のスケジュールは無料サイトで誰でも閲覧できるので、重要度の高いものをピックアップしておきましょう。
FXにおけるUSD(米ドル)の下落理由は?



USDが上昇する理由はわかったけど、下落する要因もあるんでしょ?



うん。そうだね。ここからは4つの下落要因についても確認していこうか。少し難しく感じるかもしれないけど、上昇時と反対の内容と捉えておけば問題ないよ。
世界情勢
軍事衝突や金融危機が落ち着き「有事のドル買い」で集まっていた資金が再度市場に分散し始めると、USD価格が下落する可能性があります。
週末だってのに相変わらずドル円底堅い。持ち越しのリスクは買いの方が高いだろうに。
— じゃん (@slow2056) March 4, 2022
有事のドル買いがこのドル高の理由ならば有事じゃなくなったら叩き売られるんでは?停戦は無理でも終わりが見え始めたら。
要人発言
アメリカの要人発言はドル売りを引き起こす可能性があり、過去に米財務長官がドル安を容認した際は短期間で2円もの下落が発生しました。
昨年からのドル円の動きを更新。
— 遠藤寿保(FXエバンジェリスト) (@eva_endo) January 22, 2019
昨年1月のダボス会議では、ムニューシン米財務長官がドル安容認発言で110円台から108円台まで下落。
今年も、要人発言には注意が必要か。 pic.twitter.com/sOzzD5Wqza
また国内の物価が適正水準より低い旨の発言も、通貨安につながる利下げのサインとなるため、中央銀行関係者の動向は特に注視しましょう。
金融政策
金融政策も下落要因の1つであり、金融緩和によって政策金利が引き下げられた場合はドル売りの流れに発展しやすい傾向です。
【オーストラリアの中央銀行が利下げを実行した時のチャート】
出典:SBI証券「政策金利の変更発表時に動く為替レート」を基に作成
実際に政策が発表されなくても、要人発言によって観測が強まった時点で市場はドルを売り始めることもあります。
経済指標
経済指標が市場予想よりも低い数値、内容だった場合はドル売りになる可能性があります。
- 米雇用統計→前月比よりも数値が下がった/市場予想よりも低い
- FOMC声明・議事録→景気の悪化を示唆して利下げに言及
- フェデラル・ファンド金利(FF金利)→前回より金利が下がった
【米雇用統計後の下落チャート】
出典:マネックス証券
その他に、国内総生産(GDP)やISM製造業景気指数、消費者物価指数(CPI)も予想を下回ればドル売りにつながり、他の通貨にも影響を与えるでしょう。
ただし、あらかじめ市場が悪い結果を織り込んでいるとあまり下落しないケースもあるため「悪い結果=ドル売り」という条件反射で取引しないように注意してくださいね。
FX初心者はUSD(米ドル)を理解してからトレードしよう



FXはまずUSDを理解してから始めた方がよさそうね。



USDは世界で最も取引シェアが大きく国際間の決済にも用いられている基軸通貨。アメリカの景気が他の国や通貨に影響を与えることも多いから、USDの動向を分析すれば市場全体の様子が把握できることもわかったね。
USDの価格変動要因は以下の4つ。
- 世界情勢
- 要人発言
- 金融政策
- 経済指標
上記の内容を把握した上でUSDチャートを分析すれば、為替相場全体の理解をより深められるでしょう。
FX初心者がUSDをトレードする場合はスプレッドが狭く値動きも緩やかなUSD/JPYがおすすめ。
経済指標発表のスケジュールもきちんと確認して、少しずつ経験を積み重ねてください。