
FXはゼロサムゲームってよく言われてるよね。



一般的にはそう言われているけど、実際にはFXは完全にゼロサムゲームと呼べない要素もあるんだ。



え!? そうなの?じゃあFXは何のゲームになるの?



まずはゼロサムゲーム以外にもマイナスサムゲームやプラスサムゲームと呼ばれるものがあるから、その言葉の意味から詳しく見ていこう。
そもそもゼロサムゲームとは?


ここではゼロサムゲーム、プラスサムゲーム、マイナスサムゲームという言葉の意味について以下に解説していきます。
ゼロサムゲーム
ゼロサムゲームという言葉自体は、「ゲーム理論」と呼ばれる経済理論の用語からきています。
その言葉の意味はゲーム内で勝った人の利益と負けた人の損失が等しくなるゲームのことをいいます。
プラスサムゲーム
プラスサムゲームとは、その言葉どおりの意味でゲームの参加者の利益と損失の合計がプラスになるもののことを言います。
別の言葉で言い換えるとWin-Winの関係になるともいえます。
プラスサムゲームにはサービスやモノづくりなど価値を生み出す仕事などが挙げられるでしょう。
具体的な例を挙げると、私たちが利用しているiPhoneはApple社が生産し、そこに付加価値を付けて販売しています。その売上はApple社の儲けとなり、また従業員にも給与という形で支払われ、商品を買った我々もその価値を得ることができます。
マイナスサムゲーム
マイナスゲームとは、参加者の大半が平均して負けるゲームのことを言います。
例えば、マイナスサムゲームの1つに宝くじが挙げられます。
なぜなら宝くじの賞金は、宝くじを買った人の資金でまかなわれており、全体の還元率は45%と言われているからです。
1等などを当てた人は大儲けしますが、大半の人は損をする確率の方が圧倒的に高いゲームといえます。
宝くじの他にも、マイナスサムゲームには、パチンコや競馬などいわゆるギャンブルと呼ばれるものが挙げられます。
FXがゼロサムゲームと言われる理由とは?





各ゲームの説明はわかったけど、なぜFXはゼロサムゲームに該当するの?



それは、FXは以下に解説する2つの原則に基づいているからなんだ。
1.等価交換が原則
FX取引をする場合、必ず等価交換の原則に従わなければなりません。
例えば、あなたが1ドル100円の時にドルを買いたいと思ったとします。そしてそれを行うためには、同じレートで逆に円を買いたいと思っている人がいなければ取引は成立しません。
これは新規にポジションを取る時だけでなく、利益確定をしたい場合でも同様に同じだけの反対取引をしてくれる人がいなければ利益を確定することができません。
比較的取引量が小さいうちは、上記のように取引が成立しないといった事態に陥る確率は低いでしょう。
しかし資金が大きくなり、取引量が増えることによって同じ量の反対取引を行うことが難しくなり、エントリーや決済ができない可能性が高まる場合もあります。
2.一方が得をすれば、一方が損をする
これは言葉どおりの意味で例えば、等価交換の原則に基づき日本人のAさんがアメリカ人のBさんから1ドル100円の時に1ドル札を買ったとします。
この時Aさんには1ドル札が、Bさんには100円硬貨がある状態です。
(これがFX取引の基本であり、実際にはここにレバレッジをかけた証拠金取引になります。)
その後にレートが1ドル120円まで上昇したとします。
Aさんは持っていた1ドル札を円に換金して利益を確定しようとしますが、BさんはAさんの1ドル札を得るためには120円支払わなければなりません。
つまりこの時点でAさんは20円得をすることになりますが、Bさんは20円の損をすることになります。
FXのゼロサムゲームは嘘。9割の人が負ける仕組みとは?





FXでは9割の人が利益を出すことができないと聞いたことがあるけど、本当にゼロサムゲームなの?



良いところに気がついたね。9割の人が利益が出せないと言われている理由には、トレードのやり方が悪いなど技術的な問題もあるかもしれないけど、実はそもそもマイナスサムゲームになる仕組みがあるんだ。それをこれから解説していくよ。
1.FX業者によるスプレッド(手数料)がある
上の画像を見ると、「0.2」と表示されていることがわかると思います。
この「0.2」とはスプレッドのことで手数料を意味しています。
では「0.2」とはどのくらいの手数料になるのかというと、例えばドル円を1万通貨ロングした場合、20円の手数料がかかることになります。
これはポジションを建てた直後に評価損益がマイナス20円からスタートすることにより、その手数料を支払っていることになります。
また上記のツイートからもわかるとおり、エントリーした水準と同じ水準で決済した場合、スプレッドの分だけマイナスになり、負けトレードになってしまうことになります。
2.FXの利益には税金がかかる
FXは業者による手数料以外にも、「先物取引に係る雑所得等」という税金がかかります。
雑所得は年間20万円を超える所得がなければ課税対象になりませんが、20万円を超える場合は自分で確定申告をしなければなりません。
例えば初年度に40万円の利益が出た場合、40万円(利益)×20.315%(税率)=81,260円の税金がかかります。そして2年目に通算して40万円の損失となった場合、稼いだ額と損失額が同じであるのに税金の分だけマイナスになるということになってしまいます。



FXはマイナスサムゲームになるって考えることもできるんだね!



ちなみに、FXの年間収益がマイナスになった場合でも確定申告をしておくことで、最長で3年間に渡って得た利益とそのマイナス分を相殺することができるから、損失で終わった年もしっかりと確定申告をすることが大切だよ。
なぜFXはギャンブルで株は投資と言われるのか?





FXも株も同じようにトレードしているのに、なんでFXはギャンブルと言われて、株は投資という扱いを受けているの?



株はFXにはない特徴があるからなんだ。今から詳しく解説していくよ。
株はプラスサムゲームになり得る
株という仕組みは、出資を受けた会社がそれを元に事業を拡大し、時価総額が大きくなる可能性を秘めています。
その場合、出資した人が持っている株の価値が底上げされ、出資者全員が利益を得られるプラスサムゲームになる可能性があります。
これはFXの一方が得をすれば、一方が損をするという仕組みと異なっている点といえます。
株にはインカムゲインがある
株には時価総額が大きくなる以外にも配当金や株主優待券といったインカムゲインがあります。
株にはこのインカムゲインがあるため、買値と売値が同じでキャピタルゲインがない場合でも、長期的に保有しておくことでインカムゲインを得られます。



このように、株にはFXにはないプラスサムゲームになる特徴があるため、投資というジャンルとして扱われているんだ。
FXがゼロサムゲームといえない場合





それじゃあプラスサムゲームになる株の方がFXよりも良いじゃん!



まあ、そうあせらないでよ。実はFXにもゼロサムゲームだといえない場合もあるからそれを解説していくよ。
スワップポイントを目的とした長期投資をする場合
FXにも株の配当金と同じようにスワップポイントといわれるインカムゲインがあります。
スワップポイントとは金利の高い国の通貨を買い、金利の低い通貨を売ることで、1日単位でその金利差分を受け取ることができる仕組みのことを言います。
例えば、日本とアメリカではアメリカの方が金利が高いため、ドル円をロングすることにより、スワップポイントをもらうことができます。
ですが、逆に金利の低い通貨を買ってしまうと、マイナスのスワップポイントになってしまうため注意が必要です。



スワップポイントは当日のニューヨーク取引時間の終了(冬時間:7時、夏時間:6時)をまたいでポジションを保有することでもらえるよ。



実際にスワップポイントが付与される時間帯は1番早いところで6時頃、遅いところだと7時10分になっているんだね。
FXにおけるパイも増える
先ほどの株では時価総額が増えることにより、プラスサムゲームになり得るという解説をしましたが、FXにおける時価総額は取引高と捉えることができます。
以下のドル円の過去6年間の1営業日あたりの平均取引高を見てみましょう。
ドル円1営業日あたりの平均取引高 | |
2021年 | 4,242,000,000ドル |
2020年 | 4,566,000,000ドル |
2019年 | 6,283,000,000ドル |
2018年 | 7,499,000,000ドル |
2017年 | 8,324,000,000ドル |
2016年 | 9,270,000,000ドル |
これを見ると、2021年はアベノミクスが続いていた2016年から比べると約半分くらいの取引高になってしまっていることがわかると思います。



FXのパイ(取引高)はどのような時に増えて、どのような時に減るの?



為替はさまざまな要因に影響されるから一概にはいえないけど、アメリカの雇用統計や金利、日本経済の情勢などに影響されることになる。
プロの株のトレーダーは平均すると儲けているけどそれは投信や年金を運用する大きなファンドが平均すると損してくれているから。プロの為替トレーダーも各国政府が平均すると損してくれるからプラスサム・ゲームになる。
— Kazuki Fujisawa (@kazu_fujisawa) September 18, 2010
上記のツイートからもわかるとおり、中央銀行が為替介入する場合があります。
例えば急激な円安が起こった際、中央銀行はその円安の進行を防ぐために大量の円を買い取る為替介入を行います。すると市場に流れ込む資金が増え、取引高が増えることに繋がります。



全体のパイが決まっていることがゼロサムゲームの定義だとしたら、このような事実がある限り、必ずしもFXはゼロサムゲームとはいえないのね。
FXのゼロサムゲームは気にせずコツコツトレードを行おう!
ここまでさまざまな視点からFXの仕組みやゼロサムゲームと呼ばれる理由について解説してきましたが、結論からいうと、人それぞれのトレード手法や考え方によって変化するといえます。
例えば、プラスサムゲームと解説した株であっても、短期トレードでキャピタルゲインのみを目的とするならばそれはゼロサムゲームや投機と呼ばれるものと変わらないのです。



FXがゼロサムゲームなのかどうかを気にすること自体に意味がないような気がしてきた!



そうだね。重要なことは何のゲームとかではなくて、リスクをしっかりと把握した上で取引を行うことだといえるね。