最近はニュースで「インフレ」「デフレ」という言葉が飛び交っています。
そもそも「インフレ」「デフレ」とは何なのか、なぜ「インフレ」が進むと各国は利上げに急ぐのでしょうか?
今回は「インフレ」と「デフレ」の違いやインフレデフレになるとどうなるのかを図解とともに詳しく解説していきます。
経済の事が全く分からない人でも、ロールケーキを使って分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそもインフレ・デフレとは?


インフレ、デフレって何…?
経済のことは難しそうだしあんまり覚えたくないよ…



誰でも分かるようにロールケーキに例えてインフレとデフレの仕組みを説明していく。
インフレの仕組み


インフレとは、インフレーション(Inflation)を略した用語。物価が上昇する現象のことをいいます。
1,000円で買えていたロールケーキが値上がりして、1,500円出さないと買えなくなるということです。言い換えると、物の価値が上がって、お金の価値が下がったということです。
インフレになるイメージ


商品の数よりも買いたい人の数の方が多いため、価格が値上がりしていきます。少し高くても確実に欲しい人が増えるからです。そこで、インフレーションを引き起こします。
デフレの仕組み


デフレとは、デフレーション(Deflation)を略した用語。物価が下降する現象のことをいいます。
1,500円で買っていた商品やサービスが値下がりして、1,000円で買えるようになることです。以前よりも安く購入できるということは、物の価値が下がってお金の価値が上がったことになるのです。
デフレになるイメージ


商品の数の方が多く、買いたい人が少ない時に価格が下がります。商品がいくらでも余っているため、値段を下げないと売れないからです。そこからデフレが進みます。
インフレとデフレの違い
インフレは物の価値が上がって、お金の価値が少なくなります。デフレは物の価値が下がって、お金の価値が高くなります。
インフレ = 物の価値 > お金の価値
デフレ = 物の価値 < お金の価値
ドル円為替レートとインフレ・デフレ
インフレが進むとお金の価値が下がり、デフレが進むほどお金の価値が上がるということは、ドル円の場合どうなのでしょうか?


上図チャートは、日米物価上昇率と為替レートを比較したものです。
※物価PPPとはある国の物価に対する日本の物価上昇率のことをいいます。購買力平価とも呼ばれている数値のことです。
日本の物価上昇率は、米国の物価上昇率に比べると1970年代以降はずっと下降しているのです。つまり、最高のインフレ時からデフレへと移行しているのです。
1973年には日本はインフレのピークにあり、当時のドル円レートは何と300円でした。それから次第にドル円レートは円高へとむかっていることがわかります。
米国に対して日本の物価上昇率が緩慢になればなるほど、円高に向かいやすくなります。
インフレ・デフレになるとどうなる?


インフレ・デフレが日常生活に及ぼす影響
インフレ(物価上昇)と聞くと、ネガティブなイメージがあります。
しかし実際には、経済は成長していくのでほどよいインフレは健全な経済成長を遂げていると見なされています。(年間2.0%のインフレが理想とされている。)


インフレになるということは、需要(購買意欲)が上昇していることを表しています。
物が売れるということは売上の増加や賃金・雇用の増加につながります。物価が上がったとしても収入が増えるため商品の需要を高める効果があるのです。
逆にデフレになるということは、供給が過剰な状態になっていることを表しています。
物が売れないため売り上げが減少、賃金・雇用の低下につながるのです。
収入が減ることで、物価が下がっていても需要はますます低下していくのです。
インフレ・デフレが経済に与える影響


インフレになると、消費力が向上するため経済が活性化する効果があります。株式や不動産などの金融商品は上昇。その一方では、通貨の価値が下がりやすい点がデメリットです。
デフレになると、消費が縮小されるため経済が停滞していきます。安定した金融商品である預金や債券に資金が流入します。
過度なインフレは危険信号!
インフレは好景気・経済成長の表れであることがわかりました。
しかし、インフレも行き過ぎると結果的にスタグフレーション(Stagflation)をもたらす可能性があるため危険信号だと見なされています。
2022年から現在にかけての世界的な物価上昇はまさに過度なインフレ状態になっているのです。
日本でも値上げが続いている


2023年1月のおもな値上げ


過度なインフレが危険信号となるわけは、物価が上昇しすぎて賃上げが追い付かなくなり、消費力が著しく低下してしまうからです。
加えて通貨の価値も下がりすぎてしまうため経済が低迷します。



インフレも極端に過剰すると経済に大きなダメージを
与え始める。
世界のインフレランキング





へえー。インフレのことがよく分かってきたわ。
ちなみに世界では、どんなインフレがあったの?



世界で記録に残る驚くようなインフレ
があるから順番に紹介していく。
3位ユーゴスラビア インフレ率:313,000,000%


1992年~1994年にかけてユーゴスラビアでは内戦の激化から数時間おきに物価が上昇しました。
最高時の物価上昇率は約3億%!
5000億ディナール紙幣(日本円で約10円)で、数億円単位の紙幣が続々と発行されたのです。
通貨の価値はほとんど無きに等しく、子供たちは札束をおもちゃにして遊びました。


1日に何回も物価が上昇するため、レストランや商店では価格表示ができなかったのです。
2位ジンバブエ インフレ率:79,600,000,000%


ジンバブエでは2008年に失策を重ねる政府のおかげで、最高で796億%まで物価が上昇しました。
1日に2倍ペースで物価が高騰し、100兆ジンバブエ紙幣(約25円)や500兆ジンバブエ紙幣が発行されています。
昨日3兆円だったトウモロコシが、次の日には6兆円になってしまうのです。


日常の買い物にも莫大な金額が必要となるため、手押し車で紙幣を持ち歩く人もいたようです。
1位ハンガリー インフレ率:960,000垓%


ハンガリーでは第2次世界大戦直後に天文学的な数字でインフレが進みました。
960,000垓%(垓はゼロが20個)で物価が高騰。
96,000,000,000,000,000,000,000,000%という聞いたこともないような壮絶な数字となります。
1ペンゴ(約100円)だったコーヒーが翌年には10垓ペンゴ(1兆×10億)に値上がりし、1垓ペンゴ紙幣が発行されました。
あまりの凄まじさにギネスブックにも記録されています。


路上には、紙くずとなったたくさんの紙幣が捨てられたのでした。



インフレが度をすぎると通貨の価値がなくなり国の財政破綻につながる。日本は安全でしょ。と言ってられない日がくるかもしれない…。
インフレでなぜ利上げをするのか?





インフレになるとすごいことが起こるんだね!
トウモロコシが3兆円って…笑っちゃった。
高すぎて買えないんだもん。
でも何でインフレで利上げするの?



金利を上げると物価上昇を意図的に抑えることができるから。
インフレになるのを抑えるために行うことが多い。
適度なインフレ率は年間で2.0%。
2.0%をはるかに超えてしまった場合、通貨の価値が下がりすぎてしまうため、各国の中央銀行は物価を下げるために利上げを行います。
金利が上がると、住宅ローンや企業の借入金などの利息が高くなるため、消費を抑える効果があるのです。
利上げを行うことで物を買う人が少なくなり、物価が下がっていくことが期待されています。


また、利上げをすると預金して高い利子がもらえるので、資金を使うよりも預ける人が増えます。
そうすると物の価値が下がり、お金の価値が上がって、インフレが緩和されていくというわけです。
米国利上げと円安の関係
2022年に加速した円安の原因は、インフレで米国や欧州などが利上げを急いだこと、日本が利上げを行わなかったことです。


本来ならインフレが進んだドルやユーロの価値が下がり、円高に向かうところなのですが、資金は金利が高い方に流れる傾向にあるため、低金利のままの円が売られて金利が高いドルやユーロが買われる結果となったのです。
そして、2023年に入ってから円高が進んだのは、米国のインフレが弱まったサインが見えてきて利下げの可能性が出てきたからです。
遅れていた日本がインフレに進みだし、利上げに向かうかもしれないとの思惑があり円買いを推し進めています。
CPI~消費者物価指数でインフレ率がわかる
インフレ率から政策金利の方向性のヒントが得られるわけですが、インフレがどれくらい進んでいるのかは、毎月発表されている「消費者物価指数/CPI」をチェックすることでわかります。


そして、インフレ率を知ることで利上げや利下げの可能性を探ることができるのです。
- インフレ率が上昇 → 利上げ → 通貨が買われる
- インフレ率が下降 → 利下げ → 通貨が売られる
インフレ率が上昇すると政策金利は上がり、逆に下降すると政策金利は下がる傾向にあります。


一般的に金利が上がった通貨が買われるため、相場予想の大きな材料にすることができるのです。



インフレ・CPI・消費者物価指数・政策金利は相場を分析する上でとても重要。必ず覚えておくこと。
インフレとデフレを理解することが相場を制する


2022年は米国の止まらないインフレとFRBの利上げにてドル円は一気に151円まで上昇しました。
そこから日銀の為替介入が始まりドル円は急落に向かい始めました。
2023年1月には米国のCPIが下降したため、日本の利上げ観測から何と127円台まで押し下げています。
政策金利の発表だけでなく、消費者物価指数の発表は、今のようなインフレ時代にはとても重要指標です。
各国のインフレ・デフレをを分析して、通貨の流入はどちらに向かうのかをしっかりと分析してきましょう。